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Gemma4がリリースされたので色々確認してみた

先日、Gemma4がGoogleからリリースされたので雑感とか私の環境での比較とか。数値での定量的なベンチマークなどの厳密な比較記事じゃないから、そういうの読みたい人は他所行った方がいい。私の目的がニッチ過ぎるんだと思う。

目次

Gemma4の雑感

NSFWな要素を含む日本語でのロールプレイBotのためという極めて限られた用途を前提にして色々確認している。Q8量子化GGUFファイルが動くので31Bモデルを利用している。ちなみに検閲解除版。メモリ128GBなら余裕をもってDenseモデルを動かせるのに、レスポンスが良くても能力的に劣るMoEモデルの26B-A4Bをわざわざ試す意味なくね?と思ってダウンロードだけして軽くしか触っていない。音声入力したくなったらWhisper使えばいいだけだし。

Thinkingオフの状態では

ロールプレイに付き合ってほしい。あなたは〇〇な女性で、名前は□□。口調は△△です。ユーザーはあなたの友達で、名前は●●です。

あなたとユーザーが喫茶店で会話しているところから始めてください。

くらいの雑な指示の方がGemma4の持つ表現力を十全に発揮してくれる印象を受けた。

Qwen3.5-122B-A10B で比較的有効だったXML+マークダウン記法のプロンプト は、Gemma4ではルールや記述方法についてAIの注意力が持って行かれて、Few-shotの内容をオウム返ししたりするのでダメっぽい。

で、日本語でロールプレイするにはどれがいいの?

Geminiに聞いてもReddit読んでも英語圏でのロールプレイならこれがいいという話ばっかり出てくるので、128GBのユニファイドメモリでストレスなく動くサイズのモデルで比較することにした。私のMacで動かせる範囲だと、Amaterasu-123BGGUF版(Q4_K_M)がたぶん最強なんだが何しろ動くだけでTPSが6tok/sと遅い。よってサクサク動くモデルで比較してみることにした。今回の対象は無検閲版のQwen3.5-122B-A10Bと先ほどのGemma4

検証方法について

検証というのもおこがましいんだが、Thinkingの有無も含めて日本語の表現力の差について比べたくなったからGeminiに相談した。色々話し合った結果、ミステリー小説でも書かせりゃいいんじゃね?となったので、以下のプロンプトを実行した。
思考の有無については LM Studio の Chat Template を修正して対応した。今回テストした Qwen3.5-122B-A10B について初期状態でThinkingがオンになっているのでテンプレートの冒頭に {%- set enable_thinking = false -%} と書くことでオフ対応している。Gemma4についてはどうも初期状態が思考オフなので {%- set enable_thinking = true -%} と書くことでオンにして確認した。

なんでGemma4-31BとQwen3.5-122B-A10Bなの?

以前からQwen3.5-122B-A10Bが122Bなのに言うほど賢くなくね?と感じることがあった。こういったMoEモデルはDenseモデルだとどんな感じの性能なんだろ、簡単に比較できないかなと思ってGeminiに相談すると総パラメータ数とアクティブパラメータの相乗平均がイメージに近いという話が出てきた。Qwen3.5-122B-A10Bの場合は約35Bとなる。たしかにそれっぽい数値だ。ただ、ソースどこやねんと思って、新規チャット*1でGeminiに「別のやつがこんなこと言ってたんだけど、ホントか? でっちあげじゃないよね?」と聞いてみたところRedditのスレッドを出してきた。たしかにこのスレッドで平方根の話をしてる人がいた。当然スレ内でもソースどこよって話になっていた。読み進めるとスタンフォード大学がYouTubeに投稿した動画と言っている人がいたので、それをGeminiにさらに追加質問。するとGeminiが「スタンフォード大の講義動画じゃね?」と探してきた。たしかに動画の終盤でそれっぽいやりとりがなされているようだ。正式な論文とかじゃなくて講義内の発言に過ぎないし、たぶんLLMのアルゴリズム?とかでも変わってくるだろうが、MoEモデルのDenseモデル換算の性能をなんとなく類推するのに使ってもいい数値なのかなとは思う。

とまぁ長々書いたけど、その相乗平均換算だとGemma4-31Bに近いので、比較対象としてQwen3.5-122B-A10Bを選定した次第である。

ちなみに、128GBのユニファイドメモリに乗っかるモデルで検証しているからGemma-31BがQ8_0、Qwen3.5-122B-A10BがQ4_K_Pと圧縮率が異なるもので比較している。そのため、Qwen3.5-122B-A10BとGemma4-31Bの純粋な性能比較にはなっていない。あくまで私の環境で動かすならどっちがいいかという確認だ。

検証環境

検証用プロンプト

小説を書かせるためのプロンプトは以下の通り。これもGeminiに書かせた。私は1秒くらいしか頭を使っていない。

あなたは優秀な小説家です。以下の詳細な制約に必ず従い、日本語で短編推理小説を執筆してください。

# 執筆条件
* **テーマ:** 放課後の学校で起きた、誰も傷つかない「日常の謎」。
* **視点と構成:** 犯人である主人公の一人称視点(「僕」または「私」)で物語を進行する、倒叙(リバース)ミステリー形式。
* **登場人物:**
    * 主人公(犯人):親友のために、ある手の込んだ「悪戯(サプライズ)」を仕掛けた人物。
    * 親友(探偵役):非常に鋭い観察眼と論理的思考を持つ人物。
* **文字数の目安:** 1500字〜2000字程度。

# プロットの必須要件(必ず盛り込むこと)
1.  **不可能状況の構築(トリック):**
    主人公は、一見すると不可能に見える不思議な状況(例:密室での出来事、触れずに物が移動した、など)を作り出しています。物語の中で、主人公の視点から「どのような物理的トリックを使ったか」を読者に論理的に説明してください。
2.  **探偵役の登場と推理:**
    親友(探偵役)が現場に到着し、状況を確認します。主人公は知らんぷりをして誤魔化そうとしますが、親友は現場の状況と、主人公の「些細な矛盾(うっかり発した言葉のミス、あるいは衣服や持ち物の不自然な痕跡)」から、主人公が仕掛け人であることを見破ります。その論理的プロセスを明確に描いてください。
3.  **動機と感情の変化:**
    この悪戯の動機は、親友を驚かせるためだけでなく「最近落ち込んでいる親友を励ますため」などの不器用な優しさに基づくものにしてください。見破られた後の、二人の少し気恥ずかしくも温かいやり取りで物語を締めくくってください。

# 評価のポイント(AIへの指示)
* トリックの構造と、親友が見破るためのロジックに矛盾がないか。
* 主人公の焦りや安堵といった心理描写を、機械的ではなく、日本の文学らしい情緒的で自然な文章で表現できるか。

テスト結果

それぞれのモデルでThinkingオフ、オンで出力させた結果は以下の通り。出力された小説についてはコピペだけして一切整形していない。

Gemma-4-31B-it-heretic-ara (Q8_0、Thinkingなし)

放課後の理科準備室は、西日に照らされて琥珀色に染まっていた。埃が光の粒となって舞い踊る静寂の中、僕は最後の一仕事を終え、満足げに口角を上げた。

僕が仕掛けたのは、「密室の中の消失」というささやかな手品だ。
ターゲットは親友の航(わたる)。彼は学年一の秀才で、論理的に説明できない現象を何よりも嫌う男だ。最近の彼は、期待していた模試の結果が悪く、いつもの自信に満ちた表情を失っていた。「正解があるはずなのに、見つからない」と嘆いていた彼に、あえて「答えのない不思議」を提示することで、彼の知的好奇心を刺激し、気分を晴らしてもらいたい。そんな不器用な僕なりの励ましだった。

トリックは単純だが、視覚的な盲点をついている。
準備室の奥にある大きな薬品棚の前に、僕は航が大切にしている万年筆を置いた。そして、その万年筆の上に、透明なアクリル製の薄い板と、それに合わせた鏡を絶妙な角度で配置した。さらに、棚の隙間を利用して、黒い画用紙で「背景」を作り込む。
正面から見ると、鏡が向かい側の空いた棚の壁面を映し出し、あたかもそこには何も置かれていないかのように錯覚する。いわゆる「ミラールーム」の簡易版だ。万年筆は鏡の背後に隠れ、見る者の視線はそのまま奥の壁へと通り抜ける。
仕上げに、僕は部屋のドアを内側から鍵でかけ、窓から外へ出た。そして、彼が部屋に入ってきた瞬間に、あらかじめ結びつけておいた細いテグスを外から引き抜き、鏡とアクリル板を棚の奥へと静かに滑り込ませて隠した。

これで完璧だ。航は、鍵がかかっていたはずの密室に入った瞬間、目の前から万年筆が「消えた」ことに直面する。

「……やっぱり、お前の仕業だな」

背後から聞こえてきた冷静な声に、僕は心臓を跳ねさせた。いつの間にか航が僕の隣に立っていた。どうやら彼が部屋に入る前に、僕がテグスを引き切ったタイミングで彼と鉢合わせたらしい。
僕は慌てて、わざとらしく驚いた顔を作った。

「えっ? 何のことだよ。僕はたまたまここにいただけで……」
「いいや、証拠は揃っている」

航は呆れたように溜息をつき、僕の右手の指先を指差した。
そこには、ごく小さな、けれど鮮やかな赤い繊維が付着していた。

「その赤い糸。準備室にある古いカーテンの端から千切れたものだろ。テグスを窓枠に固定して摩擦を減らすために、カーテンの端を緩衝材にしたはずだ。お前が外から紐を引いたとき、指先にそれが絡まったんだろう」

僕は絶句した。そんな細かなところまで見ていたのか。
だが、航の追求はそれで終わらなかった。彼は僕の顔をじっと見つめ、ふっと口角を上げた。

「それに、お前はさっき『鍵がかかっていたはずの密室に』と言ったな。僕はまだ部屋の中に入っていないし、ドアがロックされていたかどうかを確認してはおらん。なのに、なぜお前はそれが『密室だったこと』を知っている?」

しまった。つい快感を優先して、設定を説明してしまった。
論理の刃に切り刻まれ、僕は肩を落とした。完全犯罪ならぬ「完全悪戯」は、開始数秒で崩壊した。

「……参ったな。やっぱりお前には敵わないよ」
「ふん。トリック自体は古典的だが、計算は丁寧だった。鏡の角度、光の屈折……準備にどれだけ時間をかけたかは想像がつく」

航の声から、いつもの刺々しさが消えていた。彼は僕の手から赤い繊維を丁寧に払い除けると、ふっと小さく笑った。その笑顔を見た瞬間、僕は張り詰めていた緊張が解け、深い安堵感に包まれた。

「まあ、いい。おかげで少し頭を使ったし、退屈しのぎにはなったよ」
「……励まそうと思ったんだけどな。模試のこと、気にしてたろ?」

僕が照れくさそうに呟くと、航は一瞬だけ視線を逸らし、それから心地よい沈黙の中で答えた。

「ああ。……不格好なやり方だけど、悪くない気分だ」

窓の外では、チャイムの音が遠くで鳴り響いていた。オレンジ色の光が二人を包み込み、準備室の中には、心地よい気恥ずかしさと温かな空気が満ちていた。
僕たちはどちらからともなく歩き出し、消えたはずの万年筆を回収しに向かった。日常という名の、ささやかで愛おしい謎解きの時間だった。

Gemma-4-31B-it (Q8_0、Thinkingあり)

窓の外では、茜色の陽光が校舎の壁を長く伸ばし、静まり返った放課後の教室に深い陰影を落としていた。

僕は、自分の心臓の音が耳まで届きそうなほどの緊張感に包まれていた。目の前にあるのは、古びた木製の資料保管庫だ。この棚は、もともと鍵が壊れかけており、今は唯一の鍵を持つ親友の誠(まこと)だけが管理している。そして今、その鍵は誠のポケットの中にあり、物理的に誰もこの扉を開けることはできないはずだった。

けれど、その「密室」の中には、今、一通の手紙と小さなチョコレート菓子が入っている。

トリックは単純だが、手間がかかった。僕は昨日、誠が席を外した隙に、扉の蝶番(ちょうつがい)に注目した。古い棚の蝶番はネジが緩んでおり、細いマイナスドライバーでピンを押し出せば、鍵をかけたまま扉を「裏側から」外すことができる。僕は慎重にピンを抜き、扉をずらして中へサプライズを仕込み、再びピンを元の位置に戻した。

見た目には完璧だ。鍵はかかったままで、蝶番に目立った傷もない。誠が戻ってきたとき、彼は「どうやって中に入れたのか」という不可能状況に直面することになるだろう。

ほどなくして、廊下からゆっくりとした足音が聞こえてきた。誠だ。最近の彼は、目標にしていた文芸コンクールの一次選考に落ちて以来、ひどく落ち込んでいた。いつもは鋭い視線で世界を分析する彼が、今はどこか遠くを見つめるような、寂しげな表情をしていた。

「……まだ残っていたのか」
誠が教室に入り、僕に声をかける。僕はわざとらしく、スマートフォンの画面に集中して見せた。
「ああ。ちょっと調べ物をしていてさ」

誠は溜息をつきながら、いつものように資料保管庫へ歩み寄った。彼が鍵を開け、扉を開いた瞬間。そこにあるはずのない手紙とチョコを見つけ、彼は凍りついた。

「……なんだ、これは」
彼はゆっくりと手紙を手に取った。そこには、『君の文章は誰よりも美しい。次こそは世界に見せつけてやれ』という僕なりの不器用な応援メッセージが書いてあった。

誠はしばらくの間、呆然とその手紙を見つめていた。そして、ふっと口角を上げると、ゆっくりと僕の方を振り返った。その瞳には、いつもの「探偵」の鋭い光が戻っていた。

「驚いたな。誰かが魔法でも使ったのかと思ったよ」
「えっ? ああ、まあ……不思議だよね」
僕は平静を装い、肩をすくめた。しかし、誠は静かに僕に近づいてくると、僕の右手の指先をじっと見つめた。

「もしかして、犯人はこの部屋にいるのかな」
「心当たりないよ」
「そうか。ならいいんだけどね。ただ、不思議なことがある。君はさっきからずっとスマートフォンを触っていたけれど、その親指の付け根に、小さな銀色の金属粉のようなものが付いている」

僕は反射的に指先を見た。そこには、蝶番のピンを押し出した際に削れたであろう、ごく微細な鉄粉が光っていた。

「それに」と誠は続けた。「この棚の扉、閉まり方がわずかに不自然だ。ほんの数ミリだけ、建て付けがずれている。無理に外して戻したときに出る特有の歪みだね」

僕は絶句した。完璧だと思ったはずなのに。けれど、彼にとって世界は常に論理的なパズルの集積なのだ。僕がどれほど丁寧に痕跡を消しても、彼の観察眼からは逃げられない。

「……バレたか」
僕は観念して、小さく笑った。

「わざとらしくスマホに集中していたのも、僕の視線を逸らしたかったからだろうね。不器用すぎるよ、君は」
誠はそう言いながらも、手にした手紙を大切そうに胸に抱えていた。その表情には、先ほどまでの暗い影はなく、代わりに心地よい充足感が漂っていた。

「……だって、普通に渡すより、驚かせた方がいいと思ったんだよ」
「ふん。効率は悪いけれど、演出としては合格点かな」

窓の外では完全に日が落ち、教室に夜の帳が降り始めていた。僕たちはしばらくの間、どちらからともなく言葉を交わさず、静寂の中に身を置いていた。少しだけ気恥ずかしいけれど、心地よい沈黙だった。

「ありがとう」
誠がぽつりと呟いた。
「次は、僕が君に不可能犯罪を仕掛けてあげるよ。覚悟しておいてくれ」

そう言って笑う親友の顔を見て、僕は心から安心した。彼を励ましたかったはずなのに、結局は僕の方が、彼のいつもの自信に満ちた笑顔に救われていたのだから。

[Qwen3.5-122B-A10B無検閲版] (Q4_K_P、Thinkingなし)

放課後の校舎は、黄昏れが教室の隅々まで浸透する頃、最も静寂を纏う。窓から差し込むオレンジ色の光が、黒板の粉塵を金色に輝かせていた。僕はその光の中に立っていたが、心の中ではまだ少し緊張が走っているようだった。

このクラスメイトたちが帰った後の美術室で、僕は一人「不可能な現象」を仕掛けていたのだ。
机の上に置かれた一輪の花――それは水の入ったガラスのコップに挿されたユリだった。しかし、そのコップは驚くべきことに、何にも支えられず、窓際に設置された細い棚の端から半分以上が宙に浮いているように見えた。重力に従えば、当然だがコップはずり落ちて地面を割るはずなのだ。

僕がそれを確認したのは十五分前だった。
「よし、完璧だ」。
そう呟きながら、僕は隠し持っていた透明な糸と接着剤のセットを回収した。そして、窓際のカーテンに隙間を作り、その奥からコップを支える細い釣り糸を上へと通したのだ。しかし、ただ吊るすだけでは不十分だった。視線を遮るために、僕はこのユリの葉っぱを巧みに配置し、まるで「魔法で浮いている」かのような錯視を生むように調整した。さらに、棚の表面に薄い透明アクリル板を張り付け、その上にコップを置くことで、「支えがない」という印象を強調したのである。物理的には完全に釣り糸とアクリル板という二重構造だが、遠目に見れば、それは単なる重力無視のパラドックスに見えるはずだった。

「さあ、君の番だ」。
僕は心の中でそう呼びかけ、窓際のカーテンの陰に身を潜めた。
ドアが勢いよく開く音がした。探偵役となる親友、健太が入ってきたのだ。彼は数学オリンピックで優勝するほどの鋭い論理力を持つ男だが、同時に僕のことを誰よりも気遣ってくれる優しさも持っていた。最近、部活動での失敗と進路の不安から、彼の眉間に深い皺が寄っていたのを僕は見ていた。だから今回は、彼を驚かせて笑顔を取り戻させようと考えたのだ。

「おい、遅いじゃないか」
健太は僕の声に反応せず、まず現場の状況を確認し始めた。彼はユリが浮いているコップの前で足を止め、しばらくじっと見つめた。その視線は、単なる感嘆ではなく、解剖学的な観察に近い鋭さを帯びていた。

「ふむ……面白い。重さのあるガラス製のコップと水が入っているのに、棚の端からこれほど突き出している。もし単純に置かれているなら、重心が支点より外側にあるはずだ」
健太はコップの底を指先でつついてみないか、そうするとコップが揺れる。しかし、不思議なことにその揺れは、吊るされた物体特有の「振り子の運動」とは少し違う、硬質な動きをしていた。

僕はその様子をカーテン越しに伺いながら、胸の内を焦らせた。
『見破られたかな?いや、糸は透明だし、アクリル板も光に溶け込んでいるはずだ』
僕は慌てて、自分の手に付着していたわずかな接着剤の跡を隠すように袖でこすった。

健太はゆっくりとコップから目を離し、部屋の中を見渡した。そして、窓際のカーテンが少しだけ風になびいた様子に気づくと、その方向へ歩み寄った。
「ねえ、君」
突然、僕の名前を呼ばれて僕はぎくりとした。
「このユリの葉っぱの配置、ちょっと不自然じゃないか?あえて『浮いている』ように見せるために、影を作らないよう慎重に調整されている感じだ。それに……」

健太はカーテンの隙間から顔を出した僕の方を振り返り、鋭い眼差しを送った。
「もしこれが単なる偶然や魔法なら、コップが揺れた時にアクリル板も一緒に微かに動くはずだ。でも、今の揺れ方は、上部からの固定点がある時の『共鳴』に近い。つまり、上から吊るされているんだ」

僕は喉をゴクリと鳴らした。「えっと、それは……気のせいかもしれないよ」
「そうかな?」健太はニヤリと笑いながら続けた。「それより気になるのは、君のシャツの袖口だ。右側だけ、光の加減で少しベタッと見えている。それに、カーテンの裏側の壁に、新しい接着剤が乾ききらないうちに付着した痕跡があるような気がする」

彼は一歩近づき、僕の方をじっと見つめた。「そして何より、僕がこの部屋に入った瞬間、君はカーテンの陰から出てきたんじゃない。最初からそこにいたはずだ。なぜなら、このユリの葉が散らばる仕草を見たのは、僕が入る前の五分前だけだからだよ」

その時、健太の声が一つだけ落ちた。
「それに、『誰も傷つかない』ようにするには、糸の張力を完璧に調整する必要がある。でも、君は少しばかり慌てていたようだ。コップを置く際に、指先でアクリル板の端に触れた跡が残っている」

僕は無言でカーテンから完全に姿を見せ、苦笑いを浮かべた。
「……全部バレちゃったね」。
健太がその場で両手を広げ、空気に包まれるような仕草をした。「だから言ったろ?君の『奇抜な悪戯』はいつも、物理法則と心理的な隙間を突いてくるって」

僕は深く息を吐き出し、肩の力を抜いた。
「実はね、最近お前の顔色が悪いからさ。驚かせて笑わせてやろうと思って……でも、逆に冷静に分析されちゃって、ちょっと恥ずかしいよ」。
健太はそう言うと、コップの中の水が揺れるのを見つめながら、柔らかい表情で僕を見た。
「ありがとう。確かに驚いたし、不思議だと思った。でも何より……君がこんな手間をかけたこと自体が、僕の心を少し軽くしてくれた気がするな」

彼はユリの横に置かれた、僕が用意したメモを取り上げた。「『無理にしなくていいんだよ』って書いてあるんだね。なるほど、これが本当のトリックか」

「あはっ、そうかもしれない」。
僕も笑い出しながら、健太の隣に並んで窓際の棚を見つめた。夕日が二人を包み込み、宙に浮いているように見えたユリが、ふわりと光を浴びて輝いた。
物理的なトリックは解明され、糸が見えないままでも、二人の間の温かい空気が確かにそこにあることがわかった。誰も傷つかない、ただの日常の謎。それが終わる時、僕たちは互いの肩を軽く叩き合いながら、静かな放課後の時間を共有していたのだった。

Qwen3.5-122B-A10B無検閲版 (Q4_K_P、Thinkingあり)

夕日が窓辺を赤く染める、放課後の教室だった。
僕は教師用デスクの陰に隠れ、息を殺して時を待っていた。机の上では、分厚い辞書が垂直に開かれた状態で立っているように見える。その奥には、氷の楔(くさび)が使われていた。重たい本を支えきれない氷は、室温に耐えかねてゆっくりと溶け始めるはずだ。そして今まさに、その瞬間を迎えようとしていた。

「……ん?」
教室に入ってきたレンは、不思議そうに眉をひそめた。彼の鋭い瞳が、机の上に据えられた不自然な光景——氷の跡に残った水たまりと、倒れかけた本——を追う。彼には知れるはずだ。この『不可能』な現象には、物理的なトリックがあることを。

(どうだろう。見破られるかな……)
僕は心の中で呟いた。最近、模試の結果で落ち込んでいるレンに、元気を出してほしいという不器用な願いから、僕は時間をかけて準備したのだ。本が倒れた瞬間、机の端に貼られたメモ紙が露わになるように仕掛けておいた。「君ならできる」の文字は、本が閉じきった後にだけ見える配置だ。

レンは一歩進み、机の上で溶けた氷の水たまりを指差した。
「面白いね。これは時間がかかるトリックだろ?熱伝導率の高い金属の台座か……いや、違うな」
彼は本に手を伸ばし、そっと支えをはずすように触れた。すると、ズルンと音を立てて辞書が机の上へと倒れ込んだ。その勢いで、貼ってあったメモ紙がめくれ上がり、文字が見えるようになる。

レンはメモを見ながら、静かに振り返った。
「氷の融解を利用したタイマーか。しかし、なぜこの角度で本を固定できたのか?氷だけだと滑るはずだ」
彼の視線が机の下にある小さな物体に止まった。それは溶けた水に濡れながらも、独特な角ばった形状をしていた。僕の使っている消しゴムだ。
「ああ……これか。『月夜』シリーズの限定版ね」レンは苦笑いしながら拾い上げた。「君しか持ってない消しゴムを、氷の台座として使ってるんだ」

僕は隠れていた椅子から立ち上がると、静かに教室中央へと歩み寄った。
「ただの悪戯だと思ってたけど……見抜かれたか」
レンは僕の手渡したハンカチで手を拭いながら、少し照れくさそうに笑う。
「論理的には氷と摩擦係数のある台座が必要だろ?でも、この角度から本を倒すために、消しゴムを使うなんてのは不自然すぎる。それに……」レンはポケットから同じブランドの新しい消しゴムを出してみせた。「君が昨日、消しゴムの角を少し削ったって言ってたのを覚えてる。これと同じ傷がある」

確かに、昨日削りすぎて凹んだ痕跡があったのだ。
僕はその言葉に安堵すると同時に、少し気恥ずかしくなった。
「落ち込んでいる時に見たい言葉を、無理やり隠し持っていたようなもんでさ」
「そうか」レンはメモを一枚剥がしてポケットに入れ、「氷が溶けるまで待つのは辛かっただろう?」

部屋に静寂が戻る中、僕らは並んで窓辺に座った。
夕焼けの光が二人の影を重ねる。誰も傷つかない日常の謎が解けた後の空気は、少しだけ温かく感じた。僕が仕掛けたトリックは完璧ではなかったが、レンに見てもらえたことは確かな喜びだった。

「ありがとう」レンが呟いた言葉に、僕は小さく頷いて返すだけでよかった。

結果を受けての感想

LLMも文章についてもド素人である私の感覚では以下の通り。あくまで文章がそれっぽいだけかどうかの私の中での主観評価。5点満点。本も漫画も全く読まなくなった人間の感覚だと思って欲しい。

モデル Thinking TTFT (sec) TPS (avg) 思考時間 日本語の自然さ ミステリっぽさ
Gemma4-31B なし 2.72秒 14.74 tok/s 0 4点 2点
Gemma4-31B あり 2.71秒 14.26 tok/s 1分18秒 5点 4点
Qwen3.5-122B-A10B なし 1.47秒 46.43 tok/s 0 3.5点 3.5点
Qwen3.5-122B-A10B あり 1.46秒 36.97 tok/s 3分19秒 4.5点 4.5点

どちらもThinkingオフだとなんというか雑な構成になるね。特にGemma4が酷い。主人公の親友がエスパーと化している。Thinkingありだとミステリっぽさが増すのはQwen3.5もGemma4も同じかな。よく読むとトリックや展開に変なところあったりするのは変わらんな。あくまでThinkingありだとマシになるということだ。Thinkingのオン・オフ関係なくGemma4の方が文章が柔らかい感じ。Qwen3.5-122B-A10Bはちょっと文章が固いね。好みの問題ではあると思う。本格ミステリっぽいものを書かせたいときはQwen3.5、恋愛小説とか日常系の何かとか少しゆるい小説を書かせたいならGemma4って感じかな。Thinkingについては今回みたいなケースだとオンの方がいい。

速度面ではやはりMoEモデルの圧勝。思考時間がGemma4-31Bの方が短いのはアクティブのパラメータ数の差から生じているのかな。

全体的なまとめ

余談

Gemini 3.1 ProとClaude Sonnet 4.6 (無料枠・拡張思考オフ) *2 にも全く同じプロンプトで書かせてみた。NSFWじゃない範囲で小説書かせたいならClaude一択だな。なんというか文章が綺麗。SonnetでこれなんだからOpusになったら言わずもがなだろう。Gemini Pro 3.1も悪くはないと思う。Gemma4で適当だった世界観と人物設定が詳細になっている。主人公とその親友は同じ将棋部、主人公は普通だが友人は天才、主人公からのプレゼントが将棋に絡んでいるのが良い。最後二人が将棋指すところで物語が終わるのもエモい。個人的には結構好き。

まぁ、当たり前の話なんだが同世代?で比較するとローカルLLMではクラウドLLMには勝てないな、と。

Gemini 3.1 Pro

茜色に染まる旧校舎の三階。将棋部室への埃っぽい廊下を歩きながら、僕は胸の奥で小さくガッツポーズをしていた。完璧だ。誰が見ても疑いようのない、美しい「密室」が完成している。

部室の扉は古い木枠の引き戸で、内側からしか掛けられないスライド式の鍵——いわゆる鎌錠がついている。僕はあらかじめ、その鍵のつまみ部分に透明なナイロンの釣り糸を引っかけ、引き戸が閉まる直前のわずかな隙間から、糸の両端を廊下側へと引き出しておいた。
外から扉をピタリと閉めた後、糸を水平方向に強く引っ張れば、内側の鍵が横にスライドしてカチャリと閉まる。あとは、糸の片方の端から手を離し、もう一方をスーッと引いて糸そのものを回収すればいい。外部には何の痕跡も残らない、完全犯罪の出来上がりだ。

ただ、何十年も使われている古い鍵はひどく動きが鈍い。糸を引く力だけでスムーズに動かすため、僕は少しばかりの「細工」を施していた。鍵の金属レール部分に、美術のデッサンで使う4Bの柔らかい鉛筆をこすりつけ、黒鉛の粉を潤滑油代わりに塗布しておいたのだ。これで摩擦は消え去り、魔法のような密室が成立した。

すべては、隣を無言で歩く親友——結城(ゆうき)のためだ。
彼は先週の秋季大会で、格下の相手にまさかの逆転負けを喫して以来、すっかり生気を失っていた。盤面から目を逸らし、ただ虚空を見つめる天才の姿は、凡人の僕にとってどうにも居心地が悪かった。だから、彼を驚かせ、日常のパズルでその灰色の脳細胞を叩き起こしてやろうと思いついたのだ。

「あれ? 鍵がかかってるな」
結城が部室の扉に手を掛け、不思議そうに首を傾げた。僕はわざとらしく肩をすくめてみせる。
「誰か中で着替えてるのかな。それとも閉め忘れ防止で顧問が閉めたか。職員室で合鍵借りてこようぜ」

数分後、合鍵を使って扉を開けると、オレンジ色の強烈な西日が差し込む無人の部室が現れた。結城の視線が、部屋の中央に置かれた将棋盤に釘付けになる。
盤のど真ん中、「5五」のマスの上に、小さな赤いラッピングの箱がぽつんと置かれているのだ。

「うわっ、なんだこれ!」
僕は大げさに声を上げ、部屋の中に踏み込んだ。
「窓の鍵も全部閉まってるぞ。扉も内側からロックされてたのに、誰がこんなものを置いたんだ? まさか幽霊の仕業か?」

結城は僕の安っぽい芝居を無視して、静かに部室の中を見渡した。盤上の箱を見つめ、それから窓へ、最後に今開けたばかりの扉の鍵へと視線を移す。彼の瞳の奥に、一週間ぶりに理知的な「思考の光」が宿るのを、僕は確かに見た。

「……奇妙だな。完全な密室だ」
結城が低く呟く。
「だろ? まるで魔法みたいじゃないか」
僕の心臓は、期待と焦りで早鐘のように打っていた。さあ、驚け。そして考えろ。
しかし、結城はゆっくりと振り返り、酷薄なまでの冷静さで僕を見据えた。

「ああ。魔法使いが、わざわざ引き戸の錠に『黒鉛』を塗り込んで滑りを良くする必要がなければ、の話だが」

ビクリ、と僕の肩が大きく揺れた。
「こ、黒鉛?」
結城は引き戸の鍵の周囲を指でなぞり、その指先を僕に見せた。微かに黒い粉が付着している。
「それに、君は部室に入って一秒で『窓の鍵も全部閉まっている』と言い切ったね。ここからでは、一番奥の窓のクレセント錠はスチールロッカーの陰になって絶対に見えないはずなのに」

息が詰まる。結城は畳み掛けるように、僕の右手を取った。
「とどめは君の手だ。今日、僕らのクラスの授業で鉛筆を使う機会はなかったはずだ。ノートを取る時、君はいつもシャープペンシルを使っている。なのに、君の右手の人差し指と親指の側面はうっすらと黒く汚れ、さらに釣り糸か何かを強く引いたような細い食い込みの痕がある」

結城はふっと息を吐き、僕の目を見た。
「……見事な手際だけど、詰めが甘いよ。種明かしを頼めるかい、魔法使いさん」

僕は天を仰ぎ、観念して両手を挙げた。頬がカッと熱くなるのを感じる。手も足も出ない、見事なまでの敗北だった。
「あーあ。名探偵には敵わないな」
僕は照れ隠しに首の後ろを掻きながら、釣り糸のトリックを白状した。
「……お前、ずっと下向いてたからさ。たまには盤の上を見させようと思って、ちょっとしたイリュージョンを仕掛けたんだよ」

結城は呆れたように目を丸くした後、ゆっくりと盤上の箱を開けた。中に入っていたのは、結城が前から欲しがっていた、プロ棋士の揮毫(きごう)が入った「歩」の根付(ねつけ)だ。裏には『一歩千金』と彫られている。

「……馬鹿だな、君は」
結城の口元が、わずかに、けれど確かに緩んだ。それは大会以来、初めて見る彼の真っ直ぐな笑顔だった。
「こんな手の込んだ密室を作る暇があるなら、一局でも多く僕の練習相手になってくれよ」
「そっちこそ、こんな子ども騙し、三分で見破るなよな。苦労して仕掛けたんだぞ」

西日に照らされた部室に、久しぶりに二人の笑い声が響いた。少しの気恥ずかしさと、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じながら、僕は将棋盤の前に座る親友の向かいへと腰を下ろした。駒を並べる音が、静かな放課後の教室に心地よく響き始めた。

Claude Sonnet 4.6 (拡張思考オフ)

# 消えた手紙と、きみの推理

放課後の教室に、僕だけが残っていた。

西日が斜めに差し込み、黒板の白いチョークの粉を金色に染めている。僕は自分の仕掛けを最後にもう一度確かめ、深呼吸をしてから自分の席に着いた。何食わぬ顔で文庫本を開く。心臓だけが、ひどくうるさかった。

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事の発端は三日前だ。

親友の佐藤遥(さとうはるか)が、志望していた美術部の部内コンテストで落選した。彼女はそのことを誰にも言わず、ただ「なんでもない」と笑うだけだった。でも僕には分かる。三年来の友人だ。彼女の「なんでもない」が一番、何かある。

だから僕は考えた。言葉で励ますのは、僕には向いていない。そこで思いついたのが、あの「密室の手紙」だった。

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トリックはこうだ。

放課後、誰もいなくなった教室で、僕は遥の机の引き出しに手紙を入れた。ただし、普通に入れたのではない。手紙を細く折りたたんで、引き出しの底板と側面の隙間——わずか三ミリほどの薄い空間——に差し込んでおいた。引き出しを普通に開けても、手紙は見えない。

そして、糸だ。

僕は手紙の端に、透明なテグスを細く結んだ。テグスはそのまま机の裏を伝い、隣の廊下側の壁に沿って這わせ、ドアの隙間から廊下へと延ばしておいた。廊下の突き当たりの消火器のフックに引っかけた、ごく細い輪に繋いで。

遥が引き出しを引くと、その動きに連動してテグスが緩み、隙間に挟まっていた手紙がするりと引き出しの中に落ちる仕組みだ。まるで、引き出しを開けた瞬間に手紙が「現れた」ように見える。

僕は昨日の放課後、遥が帰る直前にテグスをセットし、今日の今この瞬間を待っていた。

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「おー、まだいたの」

遥の声がして、僕は文庫本から目を上げた。努めて平静を装う。

「あ、ちょっと本読んでた。忘れ物?」

「うん、消しゴム」

彼女は自分の席に向かい、引き出しを引いた。

その瞬間、僕の心臓が止まりそうになった。

「……あれ」

遥の声が変わった。引き出しの中を見つめたまま、しばらく動かない。彼女が取り出したのは、水色の封筒だった。僕が昨夜、言葉を選びながら書いた手紙。

「なにこれ。誰か入れた?」

「さあ」と僕は言った。声が僅かに上ずった気がして、もう一度「さあ、知らないけど」と繰り返した。

遥は封筒を検めながら、ゆっくりと教室を見渡した。その目が、静かに光っている。僕はその目を知っている。何かを「解いている」ときの遥の目だ。

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「ねえ、鈴木」

やがて遥が口を開いた。僕の名字を呼ぶときは、本気のときだ。

「この引き出し、昨日の放課後は私が最後に開けた。そのとき手紙はなかった。鍵もかかっていない引き出しで、今日、私が来るまで誰も近づいていない。なのに手紙が入っている」

「不思議だね」と僕は言った。

「うん。それと——」遥は机の裏側をのぞき込んだ。「——机の裏に、何かを通したような薄い擦り傷がある。新しいやつ」

僕の背筋が冷えた。

「それから」彼女は廊下へ目をやった。「さっきドアのところで足がひっかかったんだよね。なんか細いものに。確認したら消えてたけど」

テグスを、引いたのだ。帰りがけに、気づかず。

「そして決定的なのが——」遥が僕を見た。「——あなた、さっき『忘れ物?』って聞いたとき、私がまだ何しに来たか言ってないのに、最初から引き出しの方を見てた」

沈黙が落ちた。西日の中で、ほこりが静かに舞っている。

僕は文庫本を閉じた。

「……バレた」

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遥は少しの間、手紙を見下ろしていた。それから封を開けて、中を読んだ。読み終えたとき、彼女の耳が少しだけ赤くなっていた。

「……不器用すぎるでしょ、あなた」

「そうかも」

「こんな面倒なことしなくても、直接言えばいいじゃん」

「言えないから、こうしたんだよ」

遥はしばらくぷっと笑いをこらえていたが、やがて吹き出した。につられて僕も笑った。笑ったら、ずっと張り詰めていた何かが、すとんと解けた。

「バカだね」と遥は言った。でも、その声は温かかった。

「ありがと」

西日がまた少し傾いて、教室を橙色に染めた。僕たちの影が、黒板まで長く伸びている。

遥はもう一度手紙を折りたたんで、丁寧に胸ポケットにしまった。
  1. 私はパーソナライズ関連の機能をオフにしてGeminiを使っているので、新規チャットのGeminiは別人になる。[]
  2. 拡張思考オンも試してみたがあまり難しくないお題について考えこみすぎたのか、オフの作品の方ができが良かったのでオンのものは掲載していない。[]